そして……後の世に『使徒戦争第一次直上戦』と呼ばれる戦いの幕は開かれた。








EVANGELION NEPHILIM

EPISODE:3







モニターに映し出されるは異形の巨体、使徒。
『最終安全装置、解除。エヴァンゲリオン零号機、リフトオフ!!』
号令と共に楽になる身体。
『シンジ君。まずは歩くことだけを考えて』
スピーカー越しに聞こえるミサトの声。
「うん……わかった……先ずは目の前の奴…サキエルって使徒を倒せば良いんだね……」
シンジは誰かに確認を取るように呟き
「さあ……行こう!」
零号機を疾らせた。



使徒に接近する零号機。
それを迎撃する為、眼窩を閃かせ不可視の光線を放つ使徒。
零号機は腰部と脚部よりフレアを吐き出しながら天高く跳躍し回避。
高度がある程度に達した所で、今度は背中からフレアを吐き出し凶悪な推力を生み、使徒に突進!
態勢を整え、飛び蹴りを叩き込む!
腕を×字に構え蹴りを受け止める使徒。
しかしその威力を受けきる事ができず、地面に足を引き擦りながら後方に吹き飛ばされビルに激突する。
着地する零号機。
構えた腕を解き自然体に戻る使徒。
二つの巨体は睨み合い、互いに突進する。



発令所には三者三様の声が響き渡る。
「凄い!」
「動いた!」

感嘆の声。

「な…何アレ!?ちょっとリツコ!零号機にあんな機能が在るなんて聞いてないわよ!?」
「嘘!?私の知らない機能が!?」

驚愕の声。

「シナリオ通りだな……」
「予想優先順位は低かったがね」

坦々とした声。

それぞれがそれぞれの感想を洩らし巨大モニターを見つめている。
そこには接近し腕を突き出しあう二つの巨体が映し出されている。

掌底の如く頭部へ突き出された使徒の右腕を、左手で受け止めている零号機。
胸の下に在る紅の球を狙って放たれた零号機の右拳を、左掌で受け止めている使徒。
両者は力比べの状態に入ったのだろう、地面に圧力が掛かり道路に亀裂が走る。
暫しの硬直の後、使徒の両腕の棒が発光し前後運度を開始する。
巨大な鉄杭を地面に撃ち付けるような豪音が幾度も上がる。
「右拳及び左掌部装甲損傷!」
眼鏡のオペレーターの声が発令所に響く。
この音は使徒の棒が零号機の手に幾度も叩きつけられた際に発せられている物のようだ。
返礼とばかりに、使徒の胸に在る紅の球に膝を叩き込もうとする零号機。
だがその膝をオレンジ色の光の壁が遮った。
「使徒!ATフィールドを展開!!」
光の壁をATフィールドと呼ぶマヤ。
零号機は続けて二度三度の蹴りを繰り出すもATフィールドに阻まれる。
「だめだわ!!ATフィールドをどうにかしない限り!」
「使徒には勝てない!!」
ミサトの叫びに続くリツコの言葉。
故に先の軍隊の攻撃は有効足り得なかったのだから。
そしてそれは現状の零号機にも言える事


………だったが。


使徒の両腕を掴んだまま、零号機は軽く跳躍し膝を曲げる。
そして使徒の顔面に向って赤く発光した両足を突き出し、ドロップキックのような蹴りを放つ!
オレンジ色の光の壁で防ごうとする使徒。
だが両足は光の壁を易々と突き破って使徒の顔面に突き刺さり、使徒を後方へと吹き飛ばす!
再びビルに激突する使徒。
ビルは倒壊して轟音と共に瓦礫の雨へと変貌し使徒を覆い尽くす。
「れ…零号機ATフィールドを収束展開。使徒のフィールドを突破しました!」
またもや信じられないと言った声を上げるマヤ。
リツコとミサトは唖然としてモニターを見つめている。
瓦礫の中から立ちあがる使徒。
全身薄汚れの状態で緑色の体液を流し、掴まれたままだった右腕は蹴り飛ばされた時に、そのまま引き千切られ失われているが、
その異形の力は、まだまだ健在の様だ。
追撃をかけようと零号機は一歩を踏み出し、そしてそのまま停止する。



『……父さん』
スピーカーから発令所に響くシンジの声
『サキエルの近くに女の子がいる』
モニターに零号機の視線の先が映し出される。
零号機と使徒の中間よりやや使徒よりの位置に在るビルの前。
其処には確かに一人の少女が地面に尻をつき、震えていた。
「青葉二尉、最寄のシェルターの確認及び保安部員の手配誘導」
シンジの意を汲み即座に指示を出すゲンドウ。
「了解!」
青葉と呼ばれた長髪のオペレーターはコンソールを操作。
「保安部員への伝達完了、現場到着まで約320秒!」
迅速に職務を果たしゲンドウに報告する。
「200秒で辿り着けと伝えろ」
もっと急がせろと急かすゲンドウ。
「了解!死ぬ気で走れと伝えます」
軽い冗談を交えながら答え行動する青葉。
「シンジ」
『解った』
場の成り行きを聞き行動するシンジ。
自身に惹き付け、少女から使徒を引き離そうと、脚部のフレアを吹かし零号機を周り込ませようとした瞬間!
「使徒!高速で零号機に接近!!」
叫ぶ眼鏡オペレーター。
『!!!!!!!』
迎え撃つ様にフレアを吹かし、使徒に突っ込む零号機。
少女に迫る使徒。
左腕を突き出す零号機。
危ない!!
ミサトを含め複数の人間から絶叫が上がり、使徒の足が少女の頭上に繰り出され


少女の頭上に出現した赤い光の壁、ATフィールドに阻まれた。


「零号機のATフィールド反応確認!」
マヤの報告が発令所に響く。
「初めての操縦でATフィールドを展開したのでさえ信じられないのに!遠隔展開までやってのけたというの!?彼は!!」
驚愕を通り越し感嘆に至った声で、瞳に怪しい光を携えながら童女のような笑顔を浮べるリツコ。
このマッドめ
思わずそんな事を心に浮べたのはミサトを含めた幾人の人員。
モニターでは零号機が使徒を体当たりで吹き飛ばした後、屈んで少女を庇う様に片手を突き出し、
ATフィールドを展開して光の壁を張っている姿が映されている。
その付近に涌いて出たかの様に何処からともなく現れる黒服の男達。
「保安部員到着しました!」
青葉の報告。
モニターに映される、座り込んだままの少女の姿と、その少女を抱え上げダッシュで走る金髪の黒服。
そしてそれに続くその他の黒服達。
黒服達が消えたのを確認し、立ち上がる零号機。
態勢を立て直し高速で走りだす使徒。

『準備体操は終り……今度は武器を試すんだね?』
誰かに確認を取るように呟くシンジ。
使徒の接近と共に消失する赤い光の壁。
そのまま勢いよく左腕を振り上げ、光の棒を稼動させ零号機の頭部に腕を突き出す使徒。
だがその瞬間!
ショルダーニードル!!
放たれた声に反応し、零号機の両肩上部から生えているかのようなプレートが展開。
円錐状の物体が高速で大量に射出され使徒に殺到する!
無数の円錐に打ちのめされ動きを止める使徒。
ライトニングサンダ―!!
今度は零号機の頭部に生えた角から電光が照射され使徒の身体を蹂躪!
青い光が夜闇を切り裂き、周囲のビルを火花が照らす。


またも信じられない事態の連続にてんやわんやの発令所。
ゲンドウはニヤリ笑いを浮べ、冬月は勝ったなと呟き、驚愕したミサトはただただ驚きの声を上げ続ける。
リツコは奪い取ったコンソールで常軌を逸した速度を発揮し嬉々としてキーボードを叩く。
コンソールを奪われたマヤは先輩素敵ですと憧れの眼差しをリツコに向け、青葉と眼鏡は状況を逐一報告している。


円錐に打ちのめされ、電光に蹂躪され、ボロ雑巾の如くズタズタになった使徒。
その異形の巨体は遂に力を失い大地に膝をついた。
『これで……終りだ!』
零号機はバックステップで使徒から間合いを取り。
覇ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!
拳を握り右腕を引き絞り構えを取る。
構えた右拳に真白き烈光が迸る。
そのまま地を蹴り、脚部及び背部よりフレアを放ちながら街を疾駆する零号機。
第一決戦兵葬!!!
拳から溢れ出す膨大な烈光が零号機を!使徒を!そして第三新東京市を白く染めて往く!!
一瞬にして使徒との間合いを詰めた零号機は引き絞った右腕を解き放ち!必殺の右拳を突き出し撃ち出す!!!

ヴァァァニシングゥゥゥゥゥ!!ブレイカァァァァァァァァァァ!!!!!

シンジの叫びと共に放たれた必殺拳は、導かれるかのように使徒の胸に突き刺さり!異形の巨体を撃ち飛ばす!!!
爆発的な!暴力的な!圧倒的な真白が!使徒の異形を包み込む!!!
使徒に背中を向ける零号機。

昇滅!!


シンジの宣告が発令所に、第三新東京市に、世界に響き渡る!


瞬間



真白は収束し、巨大な爆発が発生。
爆発は空高く十字の火柱となって巨大な墓標の如く聳え立つ。
天を彩った十字は暫しの後、月明かりの中に消え去った。



「使徒……反応消滅しました……」
狂気乱舞するリツコの姿に脅えながら状況を報告する眼鏡。
ゲンドウの口元が満足げに緩む。
「葛城一尉、作戦終了だ」
冬月が固まったままのミサトに声をかける。
「あ……はい!現時刻を以って本作戦を終了!機体回収班は準備を急いで。」
復活したミサトが指示を飛ばす。

ごきゅらりゅじゃでぃあぢぁ〜〜〜〜〜ん

謎の音がスピーカーから聞こえてくる。
同時に発令所に緊張が走る。
まさか!?まだ使徒が!?
皆の背筋を冷汗が伝う。
緊迫しモニターに向うオペレーター達。
表情を強張らせるゲンドウ、冬月。
真剣な表情で喉を鳴らし唾を飲み込むミサト。
恍惚とした表情でコンソールを操作し続けるリツコ。
だがその冷汗はスピーカーから続いて聞こえてきた音によって拭われた。
『すいませ〜〜ん、昼から何も食べてないんでお腹空いたんですけど〜〜〜』
ボケボケとした少年の声。
つまりさっきの音は……
『うぐぅ〜〜目が霞んできた〜〜〜お腹が轟き叫ぶ〜〜〜ご飯〜〜〜〜〜』
思わず発令所の其処ら彼処から押し殺した笑いが零れる。
御多分にもお約束にも漏れず葛城ミサトの口からも笑いが漏れた。
「ふふ……お疲れ様、シンジ君。」



メニューへ戻る
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送