「ふふ……お疲れ様、シンジ君。」







EVANGELION NEPHILIM

EPISODE:4







暗い部屋。
広いのか?狭いのか?どちらでも在りどちらでも無いのか?
正確な判断に迷い悩むほどの暗い部屋。
そんな部屋の中で7人の人物が会議をしている。
「使徒再来か……。あまりに唐突だな」
「15年前と同じだよ。災いは突然訪れるものだ。」
「幸いとも言える。我々の先行投資が、無駄にならなかった点においてはな」
「そいつはまだ解らんよ。役に立たなければ無駄と同じだ」
「さよう。いまや周知の事実となってしまった。使徒の処置。情報操作。
 ネルフの運用は全て適切かつ迅速に処理して貰わんと困るよ」
上座から、ビームでも放てそうなほど特徴的なバイザーの男
口髭を携えた眼鏡の男、痩せたどこか病的な印象を受ける眼鏡の男。
何処か紳士然とした厳つい男、何処か小柄な印象を受ける白髪の男。
シャギーの入ったショートカットの女性。
そしてバイザーの男の対面にゲンドウが座っている。
そのゲンドウは机に両肘を付き、手を組んで口元を隠す独特のポーズを取ったまま静かに口を開いた。
「その件に関しては既に対処済みです。ご安心を」



防護服を着たミサトが団扇で胸元を扇ぎながらテレビを見ている。
『昨日の特別非常宣言に関して政府の発表が今朝、第二』
リモコンのボタンを押しチャンネルを変えるミサト。
『今回の事件は』
再びチャンネルを変える。
『狂信』
再び
『第』
再び
『ば』
以下略、

そういう具合に一通りのTVチャンネルに目を通す。
「発表はシナリオB−22か。またも事実は闇の中ね」
どのチャンネルも昨夜の非常事態宣言の政府発表が放送されている。
「広報部は喜んでいたわよ。やっと仕事が出来たって」
後ろから同じ防護服を着込んだリツコが、作業を続けながら答える。
一時の興奮は冷めたようで、現在はマッド度数はかなり低い。
「うちも、お気楽なもんねぇ〜」
お気楽そうな口調で言うミサト。
「どうかしら、本当はみんな怖いんじゃないの?」
事務的に答えるリツコ。
「あったりまえでしょ……」
ミサトの声にお気楽さが消え真剣に呟く。
其処には確かに未知への怖れの色が含まれていた。



暗闇に満たされた会議の場。そこでは会議が進んでいる。
「ま、その通りだな。」
「しかし碇君。ネルフとエヴァもう少しうまく使えんのかね。」
「左様。君らが実験で壊した初号機の修理代。決して安くはないのだよ」
顔の下から光を浴びている為、言葉に潜む嫌味さ加減に不気味具合がMIXされ
非常に気味の悪い印象でゲンドウに口撃を加える男3人。
「今回の戦闘でのネルフの働き。如何に都市が不完全とはいえ、もう少しやれる事は在ったのでは無いのかね?」
ねちっこい口撃にポーズを崩さず沈黙を続けるゲンドウ。
「それにあの零号機の力。報告の物とは随分違う様だが?」
男の言葉に女性の形の良い眉がピクリと動く。
「聞けばあの玩具は君達の息子にあたえたそうではないか」
男の視線が女性とゲンドウに向けられ、女性の眉が再びピクリと動く。
「流石はと言っておくべきかな?随分と良かった手際は君達の子供らしいよ」
嫌味な口調で続けて
「随分と高い玩具で遊ばせて、人、時間、そして金。親子そろって幾ら使えば気が済むのかね」
「それに君の任務はそれだけではあるまい。人類補完計画。これこそが君の急務だ」
「左様。これこそがこの絶望的状況下における唯一の希望なのだよ。 我々のね」
一気に畳み掛ける男達。
「いずれにせよ。使徒再来による計画の遅延は認められん。予算については一考しよう」
上座のバイザーの男が意見を纏める。
「では、後は委員会の仕事だ。」
「碇君。ご苦労だったな」
ブオンと言う機械音と共に姿を消す4人の男。
どうやら立体映像だったらしい、下からの光もそれが原因か?
最後に残ったバイザーの男がゲンドウと女性に視線を送り
「碇君……もう後戻りは出来んぞ」
鈍い音を立てて消え去った。
「わかっている、我々には時間がないのだ」
そして部屋にはゲンドウともう一人の女性、もう一人の碇が残された。



作業を終えたミサトとリツコはトラックらしき車両で移動している。
「やっぱクーラーは人類の至宝〜〜まさに科学の勝利ね〜」
ミサトは上着を脱ぎ、タンクトップ姿で気持ち良さそうに運転している。
助手席にいるリツコは何処かと電話をしている。
「シンジ君の検査が終ったそうよ」
要件を終え、電話を置きミサトのほうを向きながら言う。
「で、どうなの、彼の状態は?」
容態を尋ねるミサト。
「外傷は無し、神経系統への負荷も許容範囲内、各種栄養値の低下が著しいだけだそうよ」
「それってつまり?」
「疲労と気疲れと空腹を除けば、問題無し」
「そう、なら大丈夫ね……」



で……件のシンジはと言うと………
「味は薄過ぎだし、量も少ない、全然足りないを〜〜」
検査を終え、出された食事を食べ終え、病院の廊下で窓の外を見ながらぼやいていた。
昨日は昼から食事を抜き、夜は夜で戦闘の後に検査へ直行。
先程食べた食事は病院特有の薄味健康食だったが不味くは無かった。
不味くは無かったが、育ち盛りの腹ペコBOYであるシンジを満足させるには全然足りなかった。
何か食料を買うにも財布が無い。鞄の中だ。
そんなシンジの耳に扉の開く音が聞こえる。
「ん?」
その音の方向を振り向くと包帯で各所を覆われた少女が、移動ベッドで運ばれて来るのが目に入った。
蒼銀の髪に紅い目が印象的な美少女だ。
シンジと彼女の目が合い、シンジの瞳と彼女の瞳が交差する。
移動ベッドはそのまま進んで行き、シンジは彼女を見つめたまま
(へぇ……先生と同じ赤い目だ………)
ただ単純にその眼が綺麗だなと思う。
そして移動ベッドはシンジの視界から消え、シンジは再び窓の外に目を戻した。



「この街とエヴァが完全に稼働すればいけるかも知れない」
オーライオーライという掛け声と共にあちこちに移動している銃器、弾薬。
ただそれぞれのサイズは巨大であり、人間が使うことは普通できない。
使おうと思えばエヴァンゲリオン並の巨大さ加減が必要になる。
という事はつまり、これらはエヴァンゲリオンの為の装備なのだろう。
「使徒に勝つつもり?相変わらず楽天的ね」
トラックの中からその光景を眺め言うリツコ。
既にトラックから降りていたミサトは笑っているような、だが真剣な顔でそれに答える。
「あら?希望的観測は人が生きる為の必需品よ」
「そうね。あなたのそういうところ、助かるわ」
リツコもトラックから一度降り、運転席へと乗り込む。
「じゃ」
そう笑顔で挨拶して二人は別れた。



クリーニングの終った自分の服に着替え、シンジは病院のソファーに座っている。
静まり返った周囲には、案内アナウンスしか聞こえてこない。
「シンジ君」
名前を呼ばれて振り向くシンジ、その目にミサトが近付いてくる姿が映った。
「ミサトさん」
ソファーから立ち上がり迎えるシンジ。
「迎えに来たわ」

ミサトとシンジはエレベーターを待っている。
そこにチーンと音を立てて、エレベーターが到着。
扉が開くと髭面の男の、碇ゲンドウの姿がある。
「あ、父さん」
「体の具合はどうだ」
ゲンドウはシンジに尋ねながら一歩下がり入り口を空ける。
エレベーターに乗り込むシンジ。
ミサトも軽い会釈の後で続いた。
「ご飯が足りない、お腹減った。それだけ、他は何ともないよ」
シンジは先程の問いに正直に答える。
「そうか、ならば問題はないな」
丁度エレベーターが止まり退出するゲンドウ。
「ついて来い。お前の義妹に会わせる」
「いもうと〜〜???」



ゲンドウに連れられやって来ましたとある病室。
そのやけに広い個室のやけに大きなベッドには先程の少女が寝ていた。
「司令」
ゲンドウを見て起き上がり、何処か嬉しそうに呟く少女。
「レイ、調子はどうだ?」
「治療処置は終っています。問題有りません」
いや見るからに重傷なんだから問題大有りだろ。
というツッコミを入れたくなるが、レイと呼ばれた少女にとっては問題ないのだろう。
「紹介する、私の息子、碇シンジだ。お前の義兄になる」
ゲンドウは傍に立つシンジを少女に紹介し
「綾波レイ。歳は11だ」
続けてシンジに、少女『綾波レイ』の事を端的に紹介する。
「兄?」
それって何?といった顔で尋ねるレイ。
「同じ親を持つ年上の男の事だ」
その呟きに辞書的な答えを口にするゲンドウ。
「ボクの知らない間に妹ができてたなんて……」
心底驚いたという顔で呟くシンジ。
「養子だ、訳有って引き取った」
「なるほど……」
訳とやらが少々気になるも一応納得する。
「使徒はシンジが倒した。今はゆっくり休み傷を癒せ」
淡々とした、しかし何処か温かみのある声でゲンドウはレイに告げる。
「わかりました」
それに答えレイはベッドに身体を横たえた。
「また見舞いに来る」
そう言ってゲンドウは病室から退室する。
「お大事に〜〜」
のんきそうな声でシンジもそれに続く。
病室の外ではミサトが待っていた。
「待たせたな葛城一尉」



病院を出た3人の前に一台のリムジンが止まっている。
「これから仕事がある」
二人にそう言ったゲンドウは、懐から財布を取りだし、一枚のカードを抜き取ってシンジに渡す。
「コレは?」
渡されたカードに目をやり尋ねるシンジ。
「これからの生活費代りだ。限度制限は無い、無駄使いはするな」
「これからの生活費?」
「詳しい話は本部で赤城博士に聞け」
そう言ってゲンドウは車に乗り込む。
「シンジ」
「ん?何?」
「これから面倒をかける事になる。すまんな」
ゲンドウの言葉が終ると同時に発射する車。
それを見送った後にシンジは、隣で敬礼しながら見送っているミサトに尋ねた。
「で……結局ボクは何かやるんですか?」



「いいですよ」
ネルフ本部内のとある部屋。
自分のやる事の説明を受けたシンジはあっけらかんと了承した。
「有り難う、じゃあこっちの書類にサインをお願い」
その答えを聞き、クリップボードに挟まれた書類を差し出すリツコ。
「ちょ…ちょっと?そんなに簡単に決めちゃって本当に良いの?」
あまりにもあっけらかんとしすぎたシンジの答えに問い直すミサト。
「別に構いませんよ?」
だが帰ってくる声は相変わらずあっさりしてる。
「それに先生にも言われてましたし」
その事を思い出す様に、シンジは目を瞑り腕を組んで口にする。


「いいかいシンジ」

「キミはあの街で運命に出会う」

「キミが碇シンジとして産まれ生きて行く以上、それから逃れる事はできない」

「逃げたとしても運命の波はキミを飲み込む為に追いかけてくる」

「だから……」




「だから戦って叩き潰せ!立ち塞がる理不尽を引き裂いて、心の示すまま思うままに行け」
目を開けて腕を解く
「……ってね」
相変わらずあっけらかんとしているが、その眼は別に不真面目と言う訳ではない。
「ですからコレからもあのコに乗って使徒と戦う事に関して、ボクとしては全然問題無いです」
「そう……わかったわ」
シンジの眼を見てミサトは一応納得する。
そんなミサトを見てこの話は付いたと認識し、リツコは次の話を持ち出した。
「じゃあ次に住居の話になるけど……」
リツコは住居資料をシンジに渡し話を続ける。
「貴方の住居は葛城一尉の部屋の隣になりました」
「司令と住むんじゃないの?」
親子なんだしと、一般的には極普通の質問をするミサト。
「葛城一尉、司令とパイロットが一緒に住んだ場合、もしもの事が起きたら?」
遠回しに危険性を説くリツコ。
「………そうね」
ミサトも『もしもの事』の含む多大多用な危険性に気付き納得する。
「納得した様ね、なら納得ついでにもう一つ」
「え…なに?」
「葛城一尉には保護者役と監視役を兼ねてもらいます。これは司令も了承済みです」



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