「葛城一尉には保護者役と監視役を兼ねてもらいます。これは司令も了承済みです」







EVANGELION NEPHILIM

EPISODE:5







相変わらず応急処置を加えただけのミサトの車。
シンジとミサトはちょっとヤバ気なその車で市街を走っている。
「さてっ、今夜はパ〜〜ッとやらなきゃね〜」
「何をですか?」
「もちろん!新たな隣人の歓迎会と引越し祝いよ!」
ミサトは楽しそうにそう言って近くのコンビニに車を止める。

「取り敢えず、こういう店の食事は味はあんまり良くないらしいから〜〜」
てな事を言いながら
「足りない満足は量と種類でカバ〜〜」
次々と目に付く惣菜をカゴに放り込んで行くシンジ。
「随分食べるのね〜〜」
呆れたような、感心したような、どっちとも取れるようなミサトの声
「かなりお腹減ってるし、成長期ですから」
そう言ってミサトのカゴを覗くシンジ。
「それよりミサトさんの方こそ、お酒とおツマミばっかりで足りるんですか?」
「大丈夫よ。ほら、コレとコレなんて結構イケルのよん♪」
と言ってカゴの中にレトルト食品と冷凍食品を放り込む。
「そうですか〜、じゃあボクも……」
てな具合に次々とカゴに食料を放り込み、向う数日分までの食料を確保してレジに清算に行く二人。
そんな二人の耳に店内の主婦達の会話が聞こえてきた。

「やっぱり引っ越されますの?」
「ええ、本当にあんな事が起きてしまいますとね」
「ウチも主人が私と子供だけでも疎開しろってうるさくて……」
「疎開ね。いくら要塞都市だからって言ったって何一つ当てにできませんものね」
「昨日の事件、思い出しただけでもゾッとしますわ……」

ゲンドウから渡されたカードで二人分の清算を済ませるシンジ。
「ミサトさんの方も終りましたよ…ってミサトさん?」
主婦達の方を見やったまま黙り込んだミサトに声をかける。
「ん?何?」
「支払い終りましたけど……どうかしました?」
「ああ、何でもないの、気にしないで」
「そうですか」
店を出て再び車に乗り込んだ二人。
「すまないけど、ちょっち寄り道するわよ」
「どこへですか?」
「い・い・と・こ・ろ♪」



第三新東京市を見下ろせる、とある高台。
二人はそこから街を見下ろしていた。
既に陽は傾き、市街は夕暮れに染まっている。
「意外と寂しい街ですね」
思ったままの感想を洩らすシンジ。
その隣で時計を見ていたミサトが口を開く。
「時間だわ」
夕暮れの第三新東京市に甲高いサイレンが鳴り響く。
高台からは見にくいが地面を覆っていた防護シャッターが次々と開いて行き
「スゴイ、ビルが生えてくる。筍みたいだ〜〜」
まさしく雨後のタケノコのように次々とビルが生えてくる。
「これが使徒迎撃戦用要塞都市、第三新東京市。私たちの街よ」
ミサトはシンジの顔を見ながら続ける
「そして…あなたが守った街、これから守っていく街よ」



二人が住居に、マンションに到着した頃には夕陽も沈みきり、すっかり暗くなっていた。
殆ど人は住んでいないのか?マンションの灯りは一つも点灯していない。
「必要な家具は揃ってるらしいから、先に食事にしましょ」
という事でミサトの部屋に行く二人。
「実は私も先日この街に引っ越してきたばっかりでねぇ〜」
鍵を開け部屋に入るミサト。
「お邪魔しま〜〜す」
シンジも妙齢の女性の部屋に入る事に少々ドキドキしながら続く。
「ま〜、ちょっち、散らかってるけど、気にしないでね」
ミサトが蛍光灯のスイッチを押し室内の様子が明らかになる。

そこには夢の島があった。

ビールの空き缶

様々な段ボールの山
酒瓶
       吊るされた下着
脱ぎ散らかしたままの服

ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ
etc〜〜

そこには夢の名残があった。
そしてそんな夢の名残を除けて机の上のスペースをキープするミサト。
「ごめん、食べ物は冷蔵庫に入れといてくれる?」
シンジお方を振り向きながらミサトは収納を頼む
が、そこには

違うっ!! こんなの女性の部屋じゃないっ!!!

そこには、あまりの厳しい現実に、つい目を背けてしまっているシンジの姿があった。
「い…いきなりそれは、ちょっち失礼じゃない?」
笑顔に青筋を立てながらミサトは一応の注意をいれた。


着替えの為にミサトは部屋に戻っている。
シンジはミサトの食料を冷蔵庫に入れようと扉を開ける。
「氷……」
その次の段を開ける。
「つまみ……」
更に次の扉をご開帳。
「ビール………小食なのかな?」
余りの食料の少なさに素朴な疑問を抱き首を傾げるシンジ。
すると、もう一つの巨大な冷蔵庫に気付いた。
「あのぉ〜、あっちの冷蔵庫は?」
「ああ、そっちは良いの。まだ寝てると思うから」
「寝てる………?」
少々気になったが続けて掃除もしたいのでシンジは気にしない事にした。


暫しの掃除の後、一応綺麗になった食卓とその周辺。
数々のコンビニ弁当に惣菜、レトルト食品、冷凍食品が万全の状態で食卓に並んでいる。
「いっただっきまーす」
「いただきます」
ビールとジュースで乾杯する二人。
「んぐっ、んぐっ、んぐっ、んぐっ、ぷは〜〜!!かぁっ〜〜やっぱ人生この時の為に生きてるようなもんよね」
一気にビールを一本空けるミサト。
その対面ではシンジが物凄い速さで箸を動かしながらカツ丼を口に運んでいる。
「ひょうひゃんふぇふね〜」
「口の中に物入れたまま喋らない」
言われたので飲み込んでから再び答える。
「同感ですね〜〜空腹の時にご飯を食べると、そんな気になりますよ〜〜」
「そうよね〜〜、どう?シンジ君もちょっちだけ飲んでみる?」
缶ビールをシンジに差し出すミサト。
「ボク未成年ですよ?」
常識を持って一言で拒否の意を返すシンジ。
「それに『成長期のアルコール摂取は脳細胞を破壊し易いから体が出来上るまで止せ』と先生に言われてますし……」
箸を動かし一口で惣菜を食べながら言う。
「冒険するにはまだまだ早いお年頃なのね〜〜シンちゃんは〜〜」
「大人しく成人するまではコレを楽しみますよ」
からかうようなミサトの言葉に、シンジは果汁入り炭酸水を飲みながら答えた。


とまあそんな感じでささやかな宴会は進んで行く
既に食卓には惣菜の類は無い。
シンジは冷蔵庫からデザートを取ってこようとして
「ん?」
「クワッ?」
ペンギンと眼が合った。
「はろ〜〜」
「クワ〜〜」
試しに軽い挨拶をしてみると反応し返してきた。
どうやら見た目より知能は高そうだ。
それに何処かで見たことの在る………
「ああ!キミは写真のペンギンか〜!」
YES
彼は確かにもう一枚の写真に映っていたペンギンだった。
「シンちゃん、どしたの?」
背後からのミサトの声
「ん、このペンギン」
「あー、彼。新種の温泉ペンギンよ」
「クワッ!」
ペンギンは挨拶をしてもう一つの冷蔵庫に入って行く。
どうやらそこが棲家らしい。
「名前はペンペン、同居人よん」



地面に生命の樹の描かれた広い空間。
その樹の先端にあたる部分に置かれている机に向い、ゲンドウは独特のポーズを取って座っている。
唐突に、脇のソファーに座りながら雑誌を黙読していた冬月が口を開いた。
「シンジ君は引き受けたそうだな」
「ああ、登録コードはゼロチルドレンとする」
「ゼロ?……欠番のサードでも、未定のシクスでも無くか?」
「ああ」
ふむ、と雑誌を閉じてゲンドウの顔を見上げる冬月。
「ユイ君は?」
おそらく会議の後で交したであろう二人の碇の会話を思い浮かべながら問う。
「現状では仕方ないとは言っている」
「だが納得はしていまい」
ゲンドウは無言で頷く。
「彼女は彼をエヴァに乗せる事はおろか、この街に呼ぶ事にさえ反対していたからな」
ああ、と肯定し幾度と無く繰り返した言葉をゲンドウは言う。
「ユイは怖れている。あの実験で観たという光景が現実になる事を」
「ならば計画を止めれば良い、だが老人達同様、彼女も止めはしまい」
冬月もまた繰り返してきた言葉で答えた。
「そう……ユイは迷いながらも進める気だ、人類補完計画 を」
殆ど確認作業のような何時ものやり取り、だが時計の針の進んだ今日はその続きが在る。
「彼女の取り得るシナリオはやはり?」
「おそらくパターンEのバリエーションだろう」
「では、君は如何するのかね?六分儀君?」
相手の取り得る手段の予測と、それに対する此方の対応
それらを昔の様に、昔の呼び名で尋ねる冬月。
「パターンEをなぞりつつパターンFを進行させますよ。水面下でね」
「F!?……本気か?」
「本気ですよ、冬月先生」
不適な笑みを浮かべながら、ゲンドウもまた昔の呼び方で答えた。



数日後――ネルフ本部内実験場――
LCLに満たされた密閉空間。
エントリープラグの中にシンジは座っていた。
『シンジ、調子はどうだ』
スピーカーから響くゲンドウの声。
「このLCLってのが気に入らない事を除けば問題無いよ」
『仕様だ諦めろ』
うぐぅと黙り込むシンジ。
ゲンドウは構わず宣告する。
『これより零号機の起動実験を行う、第一次接続開始』
それを受けてリツコがマヤ達オペレーターに指示を出した。
『主電源コンタクト』
『可動電圧、臨界点を突破』
『了解。フォーマットフェイズ2へ移行』
『パイロット零号機と接続開始』
『回線開きます』
エントリープラグ内部が虹色に輝く。
『パルス及び、ハーモニクス正常』
虹が消え視界がクリアになり、モニターから外の様子が良く見える。
『シンクロ、問題なし』
『オールナード・リンク終了』
『中枢神経素子に異常なし』
『再計算、誤差修正なし』
『チェック2590までリストクリア。
絶対境界線まであと2.5、1.7、1.2、1.0、0.8、0.6、0.4、0.3、0.2、0.1……突破。
ボーダーラインクリア。エヴァ零号機、起動しました』
何かと一つになった感覚が全身に走る。
強大な力と確たる闘志が身体中に湧きあがる。
前と同じ、エヴァンゲリオンに乗っている時に感じる物だ。
そういえば、このコの名前は何だろう?
ふと、シンジは思った。
エヴァンゲリオン零号機と呼ばれているのは知っている。
が、それは人伝えに聞いた物でこのコ自身から聞いた物では無い。
このコからは明確な意思を感じるのだ。
なら尋ねれば答えてくれるのかな?
そんなシンジの疑問に答えるかのように、シンジの脳裏に浮びあがったのは


我は、嘆きの赫き海より産まれし刃

我は、絶望の白き運命に挑みし決意

我は、神戮を為す紫鋼の巨人


我は、エヴァンゲリオン・ネフィリム!!!




『零号機からの情報、正面モニターに出ます!』
『データベース上の零号機のデータ、変更されて行きます!』
『コレは……零号機がやってるの!?』
管制室と繋がったスピーカーから何やら騒ぎ声が聞こえてくるが……
シンジは気にせず、浮びあがったその名を反芻する。
「ネフィリム……ネフィリム…ね」
その名を心に刻み、心から信頼した声で告げる。
「良い名前だよ、これからよろしくネフィリム」



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